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 イッセー尾形主演、ソクーロフ監督作品「THE SUN (太陽)」 

THE SUN(太陽)
アレクサンドル・ソクーロフ監督作品 2004年 106分  
イッセー尾形昭和天皇)、佐野史郎(侍従)、桃井かおり(皇后)、ロバート・ドーソン(マッカーサー

タイでは昨年暮バンコクで単館上映され、今年2月のバンコク国際映画祭でも特別上映された作品。内容が内容だけに、日本での公開のめどの立たない(というより話題にもできない?)メディアでも取り上げられない注目の映画。
今回アマゾンUKのDVDにて鑑賞できました。


ISSEY OGATA
as Emperor
という、冒頭のテロップに背筋がゾクっとしました。そう、これは神と崇められた天皇ヒロヒトを「人間」として描く衝撃の物語
PC液晶ディスプレイの前で106分、凄まじい緊張感の中、一気に観ました。


わずかに水平をズラした画作りや広角レンズの歪み。それらの不安定さが、天皇の苦悩、追い込まれた日本の状況を画面上に表現します。

非常に映画的な映像表現にあふれた作品です。ハリウッドが垂れ流す映像暴力に慣れた人には奇異な画像と映るかもしれません。
 この役を引き受けたイッセー尾形氏、おそらく役者としての純粋な興味・挑戦で引き受けたのでしょう。その意志には本当に頭が下がります。
誰も成し得ない偉業を成し遂げた、と言っても言い過ぎではないでしょう。イッセー氏を「陰の監督」とする意見もみましたが、ソレも納得できるような内容です。
侍従として天皇に仕える音楽オタッキー佐野史郎氏もスゴイです。
ハリウッドで国際俳優?となったMr.Ken Watanabeの意見を聞きたいですね、どう想うのでしょう? ちょっとレベルが違うでしょう? でも国辱映画「芸者(SAYURI)」で共演した桃井かおりさんも皇后役で出ているので面白い偶然ですが。
 この映画内で桃井さんはSAYURIとは比べ物にならない存在感を、ほんの数分間の演技で魅せてくれます。
監督のソクーロフは1951年シベリア生まれ。わずか53歳でこの作品を作るとは信じがたい!
私は(一応)演出者の端くれなので、「これは日本人には演出できない!」と激しく想ったことが度々。
昭和天皇が家族の写真を眺めるシーンがあるのですが、これが現実の天皇家の写真なのです! そして皇太子(すなわち現在の天皇陛下)の姿に思わず……これは本当に衝撃のシーン。日本人にはとうてい「演出」できない領域です。


映画は歴史書ではありません。映画は監督の描く寓話、ファンタジーです。
しかしこの映画は、まるで歴史書を読むように観てもらっても良いのではないか、
そんなふうにさえ想いました。

近代の天皇を真正面から描いた史上初の映画、それが外国の監督によって製作された意味も、
我々日本人は考えなくてはなりません。
仮にボクに息子や娘が居たら、彼らに見せて「日本にはこんな時代があったのだ。今の天皇陛下のお父様はこんな人だった」と話すかもしれません。

今回はアマゾンUKからのDVDでしたが、タイ発売DVDが出ているという話なので、バンコクに行ったら購入します。
より多くの日本人に観てもらい、そして語って欲しい作品です。

この作品の存在をポッドキャストを通じて教えてくださった町山智浩氏に感謝の意を込めてリファ申し上げます
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060318

はてなユーザーへのTB
http://d.hatena.ne.jp/amiyoshida/20060320/1142839960
http://d.hatena.ne.jp/nihongo/20060310

4月6日追記:
amazon.co.ukで扱われているTHE SUN
(要クレジットカード、日本への送料は700円くらいと聞いていますが、自己責任でお願いします)

http://www.amazon.co.uk/exec/obidos/ASIN/B000C05YG8/qid=1144296957/sr=2-2/ref=sr_2_11_2/026-9036304-9923602

author:匠武士 *本家webタイで想う日々、日々更新中!